(記者)
先ほどのリニアの件で、一つ追加の質問なんですけれども、47の項目について、昨日までにその見解がJR東海から示されたということのようですけれども、JR東海から出された見解についての川勝知事の評価はどうなのか。どのようにこの見解について見てらっしゃるのか、そこを教えていただけますでしょうか。
(知事)
JR東海さんは、それぞれ47の項目について順次、3回目出してこられたんですね。そしてうちの織部さんのところで、しっかり見てほしいと。それでまた返してほしいという、こういう段階なんですね。ですから、最終回答というふうには、JR東海さんもお考えになっていないということなので、そこで精査し、そしてやりとりをした上で、そして専門部会にかけると。こういう段取りなので、これがちゃんと伝わってなかったので、一部のマスコミとかあるいは県議会の議員の先生の中で、「何だ、隠していたのか」というふうな大きな誤解があったんですが、これはJR東海さんとのやりとりのそういう中身なものですから、最終回答ではないので、言ってみればそれを、大きく出してほしくないってことだったんですが、しかしそれは別に隠すべきことではないので。ですから、皆さま方にもご公表を申し上げていると。そうすると、ご覧になってすぐ分かると思いますけれども、結論的に言えば、この水を全量戻すという技術を現在持っていないという、それがますます明らかになってきたということじゃないかと思います。すなわち、全量は戻すと、水問題については、下流なんか関係ないというようなことだったわけですけれども、そうしたことも含めて、この問題に対する技術的な解決策を、現段階では、JR東海さんはお持ちでないということが分かったと。
それからまた、問題の本質はトンネルが掘れるかどうかではなくて、水の問題であるということで、これはJR東海さんにとっては、ある意味でトンネルを掘れば水が出ますから、その水をトンネル外に出すと、しかも事故なく出すということが今までポイントだったわけですけれども、この水を、これを活用している人間、また動植物、こうしたものに損害を与えないように戻すということをお考えになっていなかったということが、今回のやりとりの中でほぼ明確になったと。従って、答えがなかなか出せないというのが、出し渋ってるのではなくて、出せないというのが、JR東海さんの正直な技術レベルではないかと思います。
(記者)
ごめんなさい、そうしますと、先ほど協議の進展というのは大いにあったということでしたけれども、現実的には利水者団体との協定が結ばれるってことが、まず本工事を始めるにあたっての前提ということですので、当然この問題は年を越すことになりますでしょうし、年を越したとしても、まだそういった協定が結ばれる、そしてその後に本工事が行われるっていうことは、かなり現実的にはまだ遠い未来のことだというふうにお考えでしょうか。そのあたりいかがでしょうか。
(知事)
遠いか近いは別にしまして、未来のことですね、昨日遇遇(ぐうぐう)、中部地域の首長先生と、午後何時頃だったでしょうか。4時くらいから7時過ぎまでご一緒する機会がございました。そこには上流からいきますと、川根本町、島田、牧之原、吉田それから焼津、それから藤枝市プラス静岡市長さんもお越しになったわけでございますけれども、静岡市を除いて、みんな大井川流域でございますものですから、この方たちが、これは公開のやりとりだったわけなので、ご存知だと存じますけれども、大井川を一体的に頼っているので、一体で、この水の問題を県と一緒になってやっていきたいということでございまして、そしてこの協定を結ぶについても、きちっとしたその納得がいった上でないと協定を結んでほしくないということでございましたから、今、とてもではありませんけれども、JR東海さんが利水者やその他水に関わる論点について、明確に回答ができるレベルに達してないわけですね。ですから、到底協定が結べないということであります。
(記者)
織部局長になるかもしれませんが、確認一点だけ。まず明日の会合は、これ県の方から国交省に対してこの申し入れをするので、時間とってくれっていうふうに言ったということでしょうか。向こうから来いっていう話ではなくて。向こうから来てくれって話じゃなくて。
(織部環境局長)
向こうから来てくれということではなくて、こちらから申し入れをするっていうことです。
(記者)
ありがとうございます。県議会の議論の中で、JR東海の理解、JR東海が地元の理解を得ることが大事だというのが今すごく、国もああやって勉強会とかやっている中で、市町へのJR東海の個別の訪問について、昨年の8月に難波副知事名で出した文書には「交渉は控えてくれ」という言い方をしているんだけども、面会や面談あるいは表敬ならいいのかという質問が出ました。それに対して、織部局長は各市町の町長さんの判断だというふうに答弁をされたんですけれども、知事も同じような考えということでよろしいでしょうか。
(知事)
市町の方たちはで、県に全面的に委ねるっていうのが、基本的なこれまで表明されてきた姿勢です。しかし一方で、会うことに対して、拒否されるような人たちではないわけですね。何しに来られるのかということでありましょう。それで、「会いたい、会いたい」というふうなお声聞こえてくるので、ですから私も一度、昨日は7市町だったわけですね。それ以外に掛川であるとか菊川であるとかも入ってるわけです。御前崎市さんも入ってるわけですね、袋井も入っている。そういうことで、その人たちの首長先生と、一度会を持って、そのあたりのところを確認し、その上でというふうに思っております。来月になると思いますけれども。
(記者)
リニア協議の来年に向けての話なんですけど、今年は明日難波さんが申し入れをするなど、ある程度県側としてはJR東海とか国交省にボールを投げた状態で、待ってるものがかなり多いと思うんですけれども、来年はそのボールを待つのか、それとも、例えば環境大臣だったり、農林水産大臣だったりに会いにいって、直接こういう「協議の枠組みに入ってくれ」っていうような新たにボールを投げていくのか、そういうその来年に向けての意気込みっていうんですかね、そういったものをちょっと聞かせてもらえれば。
(知事)
当初、この夏に中部地方の知事さんの会議があって、それでリニアの建設に反対してるわけでありませんからね。しかも通る県になっていますから。われわれがどうして入ってないんですかということで、そういう問題提起をしたところから始まりまして、問題の本質が分からないまま、何か県がリニア建設工事に邪魔をしているようっていうような誤解があったわけですね。その誤解は解けただけでなくて、この問題が水の問題だということが、だんだんとまた確実に共有されるようになりました。そして江口審議官は全ての市町を回られて、そのことをしっかり確認されたわけですね。その結果、これが国交省の鉄道局のいわば所轄を超えるということも、今認識されているのではないかと思います。今、駿河湾をこれから守っていこうという会の補足についても言いましたけれども、20世紀が、仮に、大きくくくるとすれば、戦争と革命の世紀というふうに言えるんじゃないかと思います。まさに多くの人の命を奪うだけでなくて、生活を破壊し、環境を破壊する、そういうことがなされた時代でございました。そして後半は、20世紀の後半は、経済力一本で、ついにはブラジルのリオデジャネイロで地球サミットといわれるような持続可能な形での発展でしか認めることができないという、そういう流れが生まれまして、そしてSDGsにも環境とか水とかということがうたわれているわけです。そして今や、環境権という言葉もありますけれども、環境と生命というものこそ、地球全体の共有財産だということで、そうした中で一番大切な水だと。自然環境というのはまさに緑の、あるいは生物の多様性というものによって、はじめて自然の環境というものがつくり上げられているし、命は皆水をなくしては何一つ生きていくことできないということで、まさにある意味で水の世紀なんですね。その水を破壊していいのかということになりますと、つい数日前、全国ナショナルトラストの全国大会があって、そこで500人ぐらいいらした会場が、この問題について、ナショナルトラストの一員である漆畑さんが問題提起されたところ、万来の拍手が湧いたそうです。
ですから、水環境と経済効率どちらを選ぶかというような形に、今広がってきたと。それが一番集中的に、南アルプス問題に表れていると。世界最先端の交通インフラであるリニアと、つまり経済効率ですね、スーパーメガリージョン、6500万人が1時間ちょっとで結ばれると。それを選ぶのか。それとも、エコパーク、バイオ・スフィア・リザーブが正式名称です。バイオ、すなわち生命、スフィア、広がりですね。生物空間のリザーブ、保護するということで守るべきと。そういう生命圏もですね、どちらをとるんですかというような議論に今なりつつありますね。ですから、ひょっとするとこれ二者択一になりかねないと。そして、水が失われたり、それから、汚濁されたりした場合に、これはエコパークも取り消しになりかねないという問題にも広がっておりますから。水か経済だという、そういう論点がこの年末にはっきりとしてきたと。そして同時に、水を抜きに経済効率を優先するということはあってはならないというふうに、倫理感が絡まっております。ですからこういう意味では、全く違う地平で、新しい令和2年を迎えるのではないかと思います。昨年は何が問題かすら分かってなかった。「水は大丈夫ですか」ぐらいだったわけですね。大丈夫に決まっているだろうっていうのがJR東海さんで、全くテーブルにつこうとされないような状況でした。
それが全く変わって、そういう意味では大きな進展があったと思いますけれども、問題の地平が、いわば地球環境問題のそれを守るかどうか。それのシンボルが今南アルプスに集約されてると。しかもそこに、日本が誇る最高のインフラ技術であるリニアが通ると。どちらを選ぶかということになってるんじゃないかと思ってます。こういうような二項対立の中で、令和2年度を迎えるということになってると思います。新聞さんはどちらのスタンスをとられますか。そうしたことが、ジャーナリストにも問われるんじゃないかと。それは問うに値する問いだと思います。 |